ゆっくり長く
由布暮らし
7月末に3年間の地域おこし協力隊の任期を満了しました。大分弁にもすっかりリバウンドしたOです。退任して、地域おこし協力隊という仕事について自身の経験から感じたことや、これからを書いてみたいと思います。

地域おこし協力隊はご存じのように地方自治体から委嘱を受けて地域協力活動を行いながら定住を図るという地方の過疎化問題を解決するための国の制度です。
少子高齢化、都市部への人口集中、人口減少で地方自治が成り立っていかなくなっているのは日本全体の流れで、それは地域が悪いわけでもなく、ただがむしゃらに頑張らないといけないわけでもありません。町や村が自立し持続可能となるためにはやはりお金も必要なので、何を資源として稼ぐか?という地域経営の視点ももちろん大事です。現実的な経済活動とお金がなくても心豊かに暮らすというワークライフバランスは人それぞれではありますが地域活性化の目的は、関わる人それぞれの立場から持続可能なしくみをつくることと「そこで安心して暮らせる」地域になることなのではないかなと思います。

意外にもこの地域おこし協力隊という制度について知らないという声が多かったなと。「なんかようわからんけど役場からきちょん」「なんか頼んだらやっちくるるんやろ」とまちの夢を叶えてくれるスーパーマン的な期待に最初はプレッシャーで押しつぶされそうでしたが(笑)そりゃそうだなと思います。地域の方からすれば”まちになんかしてくれる人”でしかありません。でも私が湯平に居続けられたのは、最初に「湯平に来てくれてありがとう」といってくれたまちのみなさんの温かさでした。
移住者が縁もゆかりもない土地に定住するにはやはり丁寧なコミュニケーションが何より大事です。まちづくりは地域の人が望むこと、自治体が望むこと、個人の立場で望むこと、団体として望むこと、、、それぞれのゴールが違う場合、ベクトルが違うまま船を進めてもなかなか前に進みません。でも逆に、最初に明確な合意形成が出来ていれば一気に相乗効果が生まれるかもしれません。立場も時間軸も育った環境も違うのでいろんな価値観があってあたりまえですが、目的を達成するためのアクションには初めに「何のために」ということを考える機会、理解しようとする対話、全体最適を考える俯瞰的な視点が必要だなと感じます。根本的にはその地域への愛を持っているかどうかで、それは組織的なしくみをつくって生まれることでも他人任せでできることでもありません。元々そこに住んでいる方々はもう地域を守ってきたし、地元愛を持っているからこそそこで暮らしている人がいて、守り続けられた文化、歴史が既にあります。地域おこし協力隊としてじゃなくても、その地に魅力を感じ移住している方も沢山いらっしゃいます。

3年間の活動を振り返ると、ひとりよがりで突っ走ったこともあり、これはまちのひとが本当に望んでいることなのかな?と葛藤して悶々としたこともありました。じゃ、地域おこし協力隊って何のためにいるの?と考えたとき、定住率の実績を上げるとか地域の主体的プレーヤーとなり魔法のように地域が活性化してそれを実績とすることが(理想とされますが)目的ではなくて、「これからも暮らしたい場所」をまちの人と一緒に創っていくことなのかなと思います。移住者の役割とすれば、外からの視点でもう既に持っているその地域の価値の再認識を起こし、誇りを持ってもらうことだと思うのです。協力隊としての3年間で出来なかったことの方が多いけれど、ゴールはその地域でそれぞれが幸せに暮らすことだと思うので、楽しく日々過ごしていたら気づいたらここにいたなというかたちが理想だなと思っています。なんだか堅い話になりましたが、これは個人的な考えであって、任期を終えた今の率直な感想です。

9月に入ってもまだじりじりと暑い日が続いていますね。たまに隣市に出かけると暑くて息苦しくて「早くおうちに帰りたい」と思ってしまいます。最近は湯平のまだまだ知らない場所を探検したり、賑やかだった昔の話を聞いたり、先輩方の人生のストーリーに触れたりと、湯平の自然と住民としての生活を自由に謳歌していますが、今からやりたいことのひとつが農のある暮らしで自然を知ること、シンプルかつエシカル(※)で丁寧な暮らしです。
※「エシカル」とは、道徳的、倫理的なという意味であり、人・社会・地域・環境などに配慮するという考え方です。

由布グリーンツーリズム研究会にも所属し農泊も行っていますが、自然豊かな由布市の魅力をもっと知ってもらいたいしその素晴らしさをもっと体感したいなと思います。自然災害や気候変動、鳥獣被害も然り、食を守るということの根本解決に里山を守ることはとても重要なことと痛感しています。大地も人間の体と一緒で血管(水脈)と呼吸(風穴)によって生きているという考えのもと、自然本来の循環をお手伝いをするという環境再生医の先生のテキストや講座で大地の再生ということを学びながら、小さくても自分にもできることをやってみたいなと思っています。

最後に、地域おこし協力隊として着任したからこそ出会った皆さんとのご縁と経験が私の宝物です。由布に来てよかったと思っています。ありがとうございました。これからも繋がり続ける皆さんよろしくお願いします。
2022年にJターンし8月から湯平地域おこし協力隊に着任。2023年9月より湯平温泉に移住「食と笑顔とつながりを」をモットーにした「湯の平あんこーる商店」を拠点に、カンボジア人で料理人の夫、「看板インコ」のふくちゃんと二人と一羽暮らし。
温泉、自然、海の幸山の幸を食べること、映画「男はつらいよ」の寅さんが好き。
■Instagram(湯の平あんこーる商店)
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