ゆっくり長く
由布暮らし
移住前の住まい | 福岡県(神奈川県出身) |
移住時期 | 2015年3月 |
お名前 | 石口 丈登(いしぐちともみ)さん・45歳 千晶(ちあき)さん・46歳 |
職業 | 革職人 |
〇由布市への移住のきっかけを教えてください
丈登さん:
神奈川県出身で、東京の革製品の会社に勤めて、朝から晩まで革製品を作っていました。このままの働き方だと、将来、子供や家族と過ごす時間が持てないと思い、ライフワークバランスの改善を求めて、神奈川県から離れた福岡県に移住しました。
その後、自然の中での生活をめざして物件を探していた時に、現在住んでいる由布市庄内町の物件を見つけました。庄内町がとても気に入り、その日に移住を決めました。庄内町に移住のタイミングで自営業に転身し、仕事以外の“暮らし“を大切にする生活をスタートさせました。
この物件の不動産会社の社長の方が、とても気さくで、物件を見学した当日に、地元の方が集まる飲み屋に連れて行ってくれました。よそ者に対して厳しい地域もあるという話を聞きますが、社長やマスター、お客さんと同じ時を過ごし、庄内の人の温かさを感じました。移住後、地域の人とのコミュニケーションの場として頻繁に通いました。
移住後、革や材料の仕入れのため海外視察に行ってきました。視察中、海外では湯船につかることがあまりなかったので、温泉を渇望していました。海外に行ったことで改めて由布市の良さを再認識しました。その後、子どもが産まれ、ますます由布市での生活と仕事を楽しんでいます。子どものことを考えても、自然豊かなところで、地域で助け合う暮らしがしたかったので、由布市がいいと思いました。
千晶さん:
私は都会育ちなので、来たばかりの頃は、スーパーやコンビニも遠いし、車もないし、田舎に来すぎたかな、と思っていましたが、湯布院からの国道210号線の景色がイタリアのようだったのです。“あ~、なんてのどかで素敵だ~!“と感じました。夫は来た瞬間から気に入っていたのですが、私は、ここに来て3年目に、子どもが生まれてから、よりいいなと感じるようになりました。これまでに色々なところを見てきましたが、庄内町は、地域の人がずば抜けて優しいのが素晴らしいです。他の移住者も皆そう言っています。
〇今の日常的な一日について教えてください。
丈登さん:
子どもを保育園に見送って、草刈りしたり家の手入れをしたりしつつ、仕事をします。 きちんとご飯を作って家族で一緒に食べて、温泉に行ったりします。マルシェ(主に個人が生鮮食品や加工品、工芸品などを持ち寄って販売する集まりの場)や神楽、ほたる祭りなどにも行き、地域の知り合いも増えました。
移住したての時は、ゆったり過ごしていましたが、今は、子どもの将来のために、起きている時間は仕事をしている時間が増えました。最近は、佐伯市や豊後大野市で、一日でかばんを作るワークショップイベントも始めています。今後は大分市、別府市など各地でも開催を計画しています。
千晶さん:
子どもを幼稚園に送ってからはフリータイムです。地域の方に教わっている農業の手伝いがあるときは行って、それ以外は車で出かけて気分転換します。革の注文があるときは、作業して、話したい人がいたら会いに行ったり、洗濯物が多かったら家にいたりします。大抵前の日かその日の朝に、どう過ごすか決めます。
3年前からもち麦を生業にしている方に習い始め、今年はしっかりやってみようと思っています。どこか会社に属して給料をもらって生活に充てるのではなく、自分たちで作って食べる“昔のような生活”です。農業をして適度な疲労感で体も整うし、人間らしくていいな、と思っています。今までで一番健康だと思います。
〇移住後に心境の変化はありましたか?どんな変化ですか?
丈登さん:
自然の中での生活を理想としていました。ここでの暮らしは、まさに理想に近づいている感じです。毎朝子どもと遊んで、夜も顔を見ることができ、人間らしくなった感じでしょうか。仕事がひと段落したら、米を作ったり、外国人に日本のいいところを伝えたりする社会貢献活動的なことをしたいです。
千晶さん:
以前は子どもが欲しいと思っていなかったし、汗をかいたり、運動したりするのは、嫌だったんです。こんなに田舎に自分が暮らすと思っていなかったですし、子どもがいなかったら、こんな田舎を楽しめていなかったとも思います。実際にやってみたら、“意外にそっちの方が楽しいんだ”と感じます。疲労感を感じるのも楽しいし、“作ったものをそのまま食べられちゃうんだ”という感覚もいいです。“こういう自分がいたなんて”と、新たな発見でした。
〇今後、めざしていきたいことを教えてください。
丈登さん:
子どもが生まれて、地域に根付いたし、他の地域に住みたいとは思っていないので、大分県が良くなるような活動や農業をやっていきたいです。今後は、仕事の割合を減らし、地域活動の時間を増やしたいと思っています。
千晶さん:
あと10年くらいしたら、海の近くに住みたいです。ここには海はないですが、海の近くに住むことを思い描きながら、流れに任せていきたいと思います。感覚を開いて来た直観をキャッチする感じです。ここでは土に触ったりして、自然の中にいるので感覚も開かれている感じがします。
〇移住後に、こんなはずじゃなかったと思ったり、驚いたり困ったり心配するようなことはありましたか?
丈登さん:
移住後に地域に馴染めなかったり、田舎の人間関係で苦労したりする話も聞きますが、おかげさまでこれといった苦労はありませんでした。改めて理由を考えると、積極的に地域の人と交流を深めたり、地域の草刈りに参加したり、能動的に行動しているからだと思います。誰かがやってくれるとか、行政が助けてくれると思って他責でいると、なかなかうまくいかないじゃないか、と思います。
移住して10年になりますが、今でも住まわせてもらっているという意識でいます。地域の人は、代々住んでいる方がほとんどです。土地を大切する気持ちが見てとれます。
私たちもそのような気持ちでいるように心がけています。
千晶さん:
庄内町の移住者は、人に依存せずに、独立独歩な人が多いです。他の地域では移住者コミュニティのパワーバランスがあるところもありますが、ここは、群れていなくて、とてもいい距離感です。
〇移住後の生活を一言でいうと?
丈登さん:
最高。温泉もあって、温泉で地域の人と世間話するのが楽しいです。
千晶さん:
自由。とらわれない。自分が生きていきたい方向性を見つけたら、スムーズに進むのではないでしょうか。ただ、自由は自己責任が伴うと思っています。自分次第だと思います。
〇移住を検討している人に体験してほしい一日はどんな一日ですか?
丈登さん:
ちょっとハードルが高いですが、「あなたのおすすめの場所や料理を教えてください」という質問を地域の人に聞いて、その地域の方たちと過ごしてほしいです。やっぱり地域の人と触れ合わないとその土地のことはわからないと思います。
千晶さん:
レンタカーを借りて、自分で運転して気に入った場所を探してみてはいかがでしょうか。景色は結構大事だと思います。大分県は山も海も温泉もあるし、どこに身を置きたいか、実体験で感じてほしいです。「自分から行動したらきっと合う場所が見つかるよ」と伝えたいです。その土地の人とコミュニケーションをとって、感じをつかむことが大切だと思います。
石口さんは、「ランドセルリメイク受注会」や「一日でかばんを作るレザークラフトワークショップ」を開催されています。詳しくは以下をご覧ください。
https://www.instagram.com/hibikiya_leather/
https://www.instagram.com/kurashino_shukougeigaku/