インタビュー 由布市で暮らす人の声

2024年5月31日

「季節を感じる、“心地いい”生活」~布作家としての拠点の決め手は、地域の人の優しさ~

interview with 岡田鹿乃子さん
移住前の住まい東京都
移住時期2020年8月~
お名前岡田鹿乃子(おかだかのこ)・37歳
職業由布市地域おこし協力隊を経て、布作家

〇由布市への移住のきっかけを教えてください

 大分県杵築市に祖父母が住んでいたので、子供の頃に大分県にはよく遊びに来ていました。移住を考えたときに祖父母の家の近くの仕事や家を探してみたのですが、なかなかタイミングや条件が合いませんでした。それでもどうしても大分県に行きたいという思いが消えず、杵築市からその周辺の地域に広げて移住を考えようと思ったときに、由布岳の麓の景色の記憶が思い出されました。雄大な緑の景色の中に家があって、“めっちゃきれいだな”と思っていたんです。

 それから由布市を調べたところ、農泊や有機農業、神楽、竹細工など、おもてなしや文化といった人の活動も活発そうで、それらが自然の中に根付いていて、明るい印象を受けました。また、もともと織り物をやりたいと思っていたので、由布岳の麓で織り物をやっていた歴史があることもわかり、由布市の名前に「布」の字がついていることも、いいなと思いました。  

 その頃、由布市で地域おこし協力隊の募集があり、応募して合格したので、由布市への移住が実現しました。

今の日常的な一日について教えてください。

 東京に住んでいた頃に比べて、夜が早くなりました。朝5時半か6時に起きて、7時頃までにちょっと掃除をしたりヨガをしたりします。その後、朝ご飯を食べて、午前中は織り物をしたりお茶を習ったりし、お昼を食べてから、また織り物をしたりします。午後4時頃に畑仕事をやってからお風呂に入り、夜ご飯を食べて、午後10時には寝ようかな、という感じです。冬は、自宅のお風呂に隙間風が入るのでとても寒く、お湯もすぐ冷えてしまうので、温泉の年間パスポートを買って毎日のように温泉に行きました。

〇印象的な一日について教えてください。地域の人とのやりとりなどもあれば教えてください。

 まだ由布市内の違うところに住んでいたときに、畑をやりたいと思い今の場所を借り始めたのですが、土砂災害があった後で、ここに決めていいのか迷っていました。でもある日、一人で鎌(かま)で広大な土地の草刈りをしていたら、近所の家の方が「鎌じゃどうにもならん」と草刈り機を持ってきて、草を刈ってくださいました。その草刈り機の音を聞いて、他の近所の方が次々と駆け付けてくださって、“なんていいところなんだろう”と思って、感激しました。みなさんとても優しくて、自然が豊かな場所だとそういう人柄になるのかな、と思いました。優しい方が一人二人ではなくみなさんが優しくて、結束力が強くて、ここならもし災害があった時も助け合えるのではないかなと感じて、ここに住むことに決めました。立地や眺めもよかったのですが、最後の決め手は人でした。  

 野菜などのおすそ分けもたくさん頂いて、私は返せるものがないのですが、自分がどこか行ったときのお土産などをお渡ししています。

〇移住後に心境の変化はありましたか?どんな変化ですか?

 変わりすぎて何を言ったらいいか、という感じです。生活自体も変わりましたが、食べ物がおいしく、新鮮だと感じます。生産者の顔がわかるものを食べられる喜びや、食べ物から季節を感じられるようになったことです。

 そして、ご近所の方々の生きる力が本当にすごいです。お米も野菜も全部自分で作るし、家も修理するし、みなさんで集まって草刈りをしたり田んぼを作ったり地域を守っていて、強くてたくましいです。私もそういう風な姿に近づきたいな、と思います。ここでは一人では何もできなくて、私は完全に近所の方に頼りきっていますが、自然が壮大すぎて、みんなでやらないと保てない、進まない、というのがあるのだと思います。

 私はこういう地域で、ご近所の方とコミュニケーションをとりながら暮らしていくことが楽しいです。それぞれの生活があって、必要なときは協力するという適度な距離感で生活しています。ご近所の奥様達が4人で毎日犬の散歩に行くのが家から見えるのですが、仲が良くて、楽しそうで、穏やかで、その風景がとても好きです。

〇移住後に、こんなはずじゃなかったと思ったり、驚いたり困ったり心配するようなことはありましたか?

 一番困っていることは草刈りです。自然が豊かな場所で暮らしたいと思って移住しましたが、自然の勢いにびっくりしています。

 自分が育てたかったものが雑草にやられて育たなかったこともあるし、草刈りにだいぶ時間を割かないと、やりたいこともできません。私は周りの方にずいぶん頼っているのですが、雨が降ったら雑草が伸びるなとか、草刈りをやらないといけないな、などといつも考えるようになりました。

 あとは、虫です。私は虫が苦手なわけではないですが、大きくて数も多くてスケールが違います。虫が苦手な人にとっては厳しいかもしれません。慣れたという人もいますが。

 移住後は日常的に車の運転をするようになり、運転は鍛えられました。車があればどこへでも行けるし、あちこち車で出かけています。

住後の生活を一言でいうと?

 心地いい。“自分に合っている”と思います。

 私の場合は、自分の好きだなと思える自然豊かな場所でものづくりをすることがひとつの夢だったので、それが叶っているなと思います。

 人によって、場所の合う合わないはあると思うので、移住したい方が、どんな暮らしをしたいか、が大事だと思います。

〇移住を検討している人に体験してほしい一日はどんな一日ですか?

 早寝、早起きですかね。それから地域の人と話して、“由布暮らし”を体験してもらいたいです。

 季節のものもとても豊かなので触れてほしいです。ものと季節がリンクしていて、この時期にあそこに行けばあの草花が生えているかなとか、この野菜の季節がきたんだなとか、季節をダイナミックに感じる生活です。ぜひ、そういう体験をしてほしいです。


岡田さんは、現在、布作家として、作品の展覧会や、織物体験会を開催されています。
詳しくは、Instagram 野の布@no.no.nu.no https://www.instagram.com/no.no.nu.no/

をご覧ください。

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